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                    | 牧和彦 / 秋吉兼路 | 2019/11/24 |  
                    | 11/24(日)けいこ 
 この日の稽古で、全体の動きは完成しました。
 後は公演に向けて、細かい部分を直していくだけです。
 
 「夜の来訪者」
 この舞台は、山田よし子、または木口まさ子と名乗った一人の薄幸の女性を巡っての物語です。
 各自、それぞれの山田よし子像を思い描かなくてはいけません。
 私はこの劇を練習する時、いつも一人の女性のことを想います。
 
 その女性とは私と同じ岩手の一関市出身の中学の後輩で、現在22歳のアイドルです。
 
 私はジャーナリストとして、一関出身者に取材して、記事を書く仕事もしています。彼女にも取材をしましたが、記事には出来ませんでした。したがって、この稽古日誌が初めての活字になります。
 
 彼女の生い立ちから話しましょう。
 四人兄妹の次女で、一人の姉と妹、弟がいます。
 父親は結婚式場の二代目社長。
 いわば社長令嬢として、何不自由ない境遇で、生まれました
 
 彼女が小学六年生の時、肺炎になり、その退院祝いとして、少女雑誌のモデルオーディションに応募したところ、グランプリを受賞。読者モデルの道を歩むわけです。
 
 順風満帆の人生だった彼女が中学二年の時に
 、悲劇が襲います。
 
 父親が経営していた結婚式場が15億の負債を出して倒産。
 その半年後に東日本大震災。
 
 両親は離婚し、兄妹は母親の実家へと身を寄せます。
 母親は生活のために、一関市内にパブを開きます。
 パブといっても、肌を露出した、女性を売り物にしたお店です。
 母親は非常に美しく、また、東日本大震災で職場を失った女性達を雇ったことなどにより、店は繁盛しました。
 「夜の来訪者」に出てくる「夢の花園」のようなお店です。
 
 その頃、彼女の事務所で、アイドルグループを結成する動きが出てきました。
 
 彼女は非常に人見知りで、モデルのようにカメラの前でポーズを取ることは得意でも、歌や踊りはそれほど好きではありません。
 
 しかし、彼女の夢は家族と一緒に住む家を持つことです。
 
 そのため、彼女は苦海に沈む決心をします。
 
 だが、大手事務所のアイドルグループに阻まれて、彼女のアイドルグループはなかなか上に行くことが、できません。
 
 そのうち、特撮番組のヒロインの話がきます。
 
 彼女は女優業にも、興味がありません。しかし、やはり兄妹のため、仕事を受けます。
 
 だが、アイドルの仕事も特撮の仕事もギャラが安く、家を買うまでには到底、届きません。
 
 彼女はオフのたびに、一関に帰省して、母の店を姉と共に手伝っています。
 ミニスカートを履いて、下品な酔客の相手です。
 
 私は今、芸能界にも所属していますが、実は彼女のような境遇の女性は大勢います。
 
 江戸時代、貧乏な農村の娘が遊郭に売られる、そんな話がまだ現代でも、続いているのです。
 
 「夜の来訪者」に、【世の中に数千、数万の山田よし子がいて、這い上がろうとしても、蹴落とされるのです】
 
 というセリフが、あります。
 
 彼女はまさに、その通りの人生です。
 
 その彼女も事務所の意向で、12月にアイドルグループを卒業することになりました。
 事実上の解散です。
 
 これからは、モデル業だけで活動していくそうです。
 
 彼女やまたその家族に陽の当たる時は、来るのでしょうか?
 
 私は、そんな事を考えながら、この劇を演じています。
 
 
  
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