第65回公演  青 い 鳥   名場面&ストーリー
第1場「チルチル・ミチルの家」より

♪ ぼくんちは 暗くて狭い
  お菓子 なんか ないわよ ♪

チルチルとミチルは貧しいきこりの子どもで、粗末な小屋で暮らしていました。
クリスマスの前夜。向かいにあるお金持ちの家で開かれているパーティーの様子を、二人がうっとりと寝室の窓から眺めていると、突然、ベリリウンヌという魔法使いのおばあさん現れて言いました。
「あたしゃ青い鳥がほしいのさ。お前たち探しに行ってくれないかい。」
第1場「チルチル・ミチルの家」より

お調子者のパン、怖がりな砂糖、情熱的な火、人情派なイヌ、気ままなネコ、優しい光・・・ チルチルとミチルの前に現れた色んなものの妖精たち。
チルチルが、ベリリウンヌにもらった帽子のダイヤモンドを回しながら「見えないものを見せておくれ!」と唱えると、寝室のあちらこちらから嬉しそうに飛び出してきました。
ダイヤモンドを逆回しにすると妖精たちはもとの姿に戻ります。
ところが、今度は早く回しすぎしまったため、もとの姿に戻れなくなって妖精たちは大騒ぎになります。
ベリリウンヌの提案で、チルチルとミチルと一緒に、妖精たちも青い鳥を探す旅にでることになりました。
でも、青い鳥を探す旅が終わったら妖精たちの命もなくなってしまうのです・・・
第3場「夜の御殿」より

最初に訪れたのは夜の女王が住む「夜の御殿」。
光は夜の御殿には入れないので、入り口で待っています。
一番最初に、ネコがこっそりと夜の御殿に現れました。
 「大変なんです女王さま。チルチルとミチルが青い鳥を探しにやってくるのです。」
 「なんだって!」
二人がなにやら相談をはじめようとしたところで、他のみんなが入ってきました。
チルチルが夜の女王の前に進み出ます。
「夜の女王様。青い鳥がどこにいるか教えてください」
第3場「夜の御殿」より

夜の女王は、大きな鍵をもっていました。
それは、夜の御殿の中にある様々な扉が開く鍵で、夜の女王はその扉の番人をしていたのです。
「扉の向こうは、悪という悪、病気という病気、災難という災難、恐れという恐れだの、人間を苦しめてきた秘密という秘密がいっぱい閉じ込められているのさ。」 青い鳥はこんなに恐ろしげなところにいるのでしょうか?
けれども、チルチルは夜の女王からその鍵を貸してもらい、扉の向こうを探ってみることにしました。
一番最初の扉を開くと中から飛び出してきたのは・・・恐ろしい格好をした幽霊たちです!
幽霊たちは不気味なダンスを踊りながら、あっちこっちに飛びまわりました。
第3場「夜の御殿」より

幽霊のいる扉を覗いた後、病気のいる扉、戦争のいる扉などの中を覗いて探したのですが、青い鳥は見つかりませんでした。
それでも諦めずに、チルチルが次の扉を開けようとすると、夜の女王がいかめしい声を出しました。
「その扉は開けてはいけないよ!」
「そこを覗いたら最後、恐ろしいものが飛びかかってくるんだ。」
これには、みんなもすっかり震え上がり、「ぼっちゃん、やめましょう!」「帰りましょう!」と口々に訴えました。
チルチルは少し悩みましたが、やっぱり扉を開ける決心をします。
みんなに隠れているように言うと、一人残ったイヌと共に、大きな扉に鍵を差し込みました。
第3場「夜の御殿」より

「やあ大変だ!みんなおいでよ、早く早く。とうとう見つけたぞ!」
チルチルの声に、みんながおそるおそる顔を上げると・・・扉の向こうに広がっているのは、美しい「夢の花園」でした。
そして、そこには数え切れないくらいの青い鳥が飛びまわっていたのです。
みんなは、飛んだり跳ねたり夢中になって捕まえ、腕いっぱいに青い鳥を抱えると、意気揚揚と花園から出ていきました。
・・・と、だれもいなくなった花園に、夜の女王とネコが現れました。
「日の光のなかでも生きていられる青い鳥は、とられたかい?」
「いいえ。あれは、まだ、あそこにとまっていますわ。」
第4場「チルチルの涙」より

夜の御殿の入り口で待っていた光に、みんなは得意になって捕まえてきた青い鳥をみせました。
ところがどうしたことか、鳥はみんな死んでいたのです。
チルチルとミチルは悲しくなって泣き出しました。
「いい子だからなくんじゃありませんよ」
光は二人にやさしく声をかけました。
「明日は思い出の国へ行きましょう。おじいさんやおばあさんに会えるわよ。」
「二人とも死んじゃったのに、どうして会えるんだろう。」
チルチルが訪ねると光は答えました。
「思い出の中で生きているからよ。」
第5場「思い出の国」より

「おじいちゃん!おばあちゃん!」
 思い出の国に来たチルチルとミチル。
ずっと前に死んだおじいさんとおばあさんがベンチに座っているのを見つけると、嬉しくなって駆け寄り、みんなは抱き合って喜びました。
「私たちはね、いつでもここにいて、生きている人が会いに来てくれるのを待っているんだよ。」
おばあさんがそう言うと、おじいさんも続けました。
「お前たちが、思い出してくれるだけでいいんだ。そうすれば、このとおり目が覚めて、お前たちに会うことができるんだよ。」
第5場「思い出の国」より

思い出の国からの帰り道。チルチルとミチルは嬉しくてたまりませんでした。
なぜなら、思い出の国には、おじいさんとおばあさんだけではなく、青い鳥までいたからです。
二人は青い鳥を入れたカゴを掲げ、中をのぞきました。けれども、次の瞬間二人はびっくりして声をあげました。
「今度は黒くなっちゃった。」
さっきまでは、たしかに真っ青だったのに、今鳥かごに入っている鳥は、真っ黒です。
青い鳥ではなかったのでしょうか?
「本当の青い鳥はどこにいるんだろう?」
第6場「森」より

森にやってきたチルチルとミチルは、ダイヤモンドの魔法で木の精を呼び出しました。
木々の大王かしわの肩には青い鳥がとまっています。
ところが、大王のかしわは二人が青い鳥を探しに来たことを知ると、怒り始めました。
「この森で一番大切な青い鳥をとられたら、わしたちの運命はどうなるかわかっているはずだ。であるから、手遅れにならないうちに、やっつけてしまわねばならん。」
「やっつけるだと!やい、俺の牙がみえないのか。ワン!」
イヌが吠えると、木の精たちが騒ぎ立てます。
「犬を追っ払え!裏切り者!出て行け!」
第8場「幸福の花園」より

次にやってきたのは、幸福の花園。
ここには、すべての喜びと幸福が集められているのです。
最初に、騒々しい歌を歌いながらふとっちょの幸福、贅沢たちがやってきました。

♪ 飲んで 食って 何にもしないで うんこして
  忙しいったら 忙しい♪ 

「世の中ってのはそれだけなんですからね。」
金持ちの贅沢はそう言いました。
他にも、満足の贅沢、酒飲みの贅沢、食べる贅沢、大笑いの贅沢たちがいて、毎日大宴会を開いて暮らしている贅沢たちは、今日もこれから開かれる大宴会に、チルチルとミチルを誘います。
なんだか楽しそう・・・だけど、これから青い鳥を探しに行かなきゃいけません。
「僕たち行きません。」
二人はそう言って、誘いを断ることにしました。
第8場「幸福の花園」より

贅沢たちが行ってしまうと、小さな子どもたちが駆けてきて、チルチルとミチルを取り囲みました。子どもの幸福たちです。
子どもの幸福たちがかわいらしい踊りを踊り始めたので、二人もわくわくした気持ちになりました。
「青い鳥を知っているかい?」
チルチルが訪ねると子どもの幸福たちは首をふりました。
「知らないわ」
そして、手をふりながら去って行きました。
第8場「幸福の花園」より

今度は、優しい音楽と共に家の中の幸福たちが現れました。

♪ 窓から あふれるくらい つまっているよ 幸せが 君たちの家にもいっぱい ♪

「さあ、握手をしましょう。そうすれば、お家に帰ってから簡単に私たちを見つけられますからね。」
チルチルとミチルはたくさんの家の中の幸福たちと握手をしました。
健康である幸福、清らかな空気の幸福、両親を愛する幸福、元気に走る幸福、夢見る幸福・・・
「青い鳥がどこにいるか知っていますか?」
チルチルが訪ねると、家の幸福たちは笑い出しました。
「どこにいるか知らないの?」
第8場「幸福の花園」より

♪ お母さんの愛は いつだって
     一番大きな幸せなんだ ♪

美しい音楽と共に、元気に走る幸福が、「母の愛の喜び」を連れてきました。
チルチルとミチルは「母の愛の喜び」をじっと見つめました。
お母さんによく似ているけど、ずっと若いように見えます。「母の愛の喜び」は言います。
「お前たちがにっこりしてくれるたびに新しい力が湧いてきて、毎年若返るのよ。家にいるとわからないけど、ここだとおまえたちにも本当の意味がわかってくるはずだわ。」
第10場「未来の王国」より

チルチルとミチル、光は、未来の国に入ってきました。
「わぁ、みんな空みたいに青いわ!きれい!」
「ここはなんでも青いから、鳥だって青いだろうね。」
チルチルとミチルが辺りを見回していると、光が遠くの方を指差しました。
「ごらん。子どもたちが駆けてくるわ。」
すると空色の服を着た子どもたちが駆けてきました。そして、その中の一人がチルチルとミチルを見て言ったのです。
「君たちは生きている子どもだね!」
第10場「未来の王国」より

空色の服を着た子どもたちは、生まれる前の子どもたちでした。
決まった日がくると、金と銀のおおきな帆をもった船「未来号」に乗って地球に降りて行き、生まれるのです。
そしてみんな、地球に何かおみやげを持って行きます。
長生きの薬、だれもしらない光、みんなを幸せにするもの、病気を持っていく子どももいます。
そして、今日も「未来号」は地球へ向けて出発するようです。
船の入り口には「時のおじさん」がいて、子どもたちに声をかけていました。
「よく聞くんだ。お前たちは、ここでのことはすべて忘れてしまうのだ。生まれた後で、自分たちの役割をひとつひとつ思い出すんじゃぞ。いいな!」
第11場「別れ」より

チルチルとミチルの家の戸口。妖精たちが集まっています。
結局、旅の途中で青い鳥を捕まえることはできませんでした。
旅を終えた後、チルチルとミチルは妖精たちに別れを告げ、寝室に戻って眠りました。
そこで、戸口に残った妖精たちは、旅に出る前「旅が終わったらお供の妖精の命がなくなる」と、魔法使いのべリリウンヌに言われたことを思い出したのです。
みんなが不安になって大騒ぎをしていると、ベリリウンヌが現れて言いました。
「さあ、お前たちをもとの姿に戻してやろう。あの子たちは青い鳥の代わりに、他のものを見つけたんだよ。」
第12場「目ざめ」より

クリスマスの朝。チルチルとミチルは、お母さんに起こされて目を覚ましました。
そして、二人はびっくりしました。家の中に青い鳥がいたのです!
チルチルの飼っている鳥が青色になっていたのでした。
チルチルはこの青い鳥を、隣の家に住む病気の女の子にあげることにし、クリスマスのあいさつに来たその家のおばあさんに、青い鳥を渡しました。
しばらくすると、おばあさんが女の子を連れてチルチルとミチルに会いにきました。
「さっきまで歩けなかったんですが、青い鳥を見ると天使のように駆け出したんです。」
女の子はもらった青い鳥をしっかりと胸に抱いて、にっこりと微笑みました。
「ありがとう。あたし、ほんとうに嬉しいのよ。とってもかわいいわ。」
第12場「目ざめ」より

チルチルは、女の子に鳥のえさのあげ方を見せてあげようとして、女の子の手から鳥を取ろうとしました。
女の子が、思わず取られまいとして身を引くと、その一瞬のすきに青い鳥は女の子の手を離れ、窓の外へ飛んで行ってしまいました。
女の子が泣き出すと、チルチルとミチルは女の子の側にそっと寄り添いました。
「だいじょうぶだよ、泣かないで。僕らがまた探してあげるからね。青い鳥をきっと!」
そして、みんなで歌いだしました。

♪ 青い鳥は自由な鳥 大空を羽ばたく 
  みんなの幸せ願って 大空へ舞い上がれ・・・♪
第12場「目ざめ」より

いつもの見慣れた粗末な小屋の中が、やさしく光っているようにみえます。
窓からは柔らかい光が差し込み、暖炉では火が赤々と燃え、部屋の中を明るく、暖かくしてくれます。
テーブルの上にはふっくらとしたパンと、甘いお砂糖がおいてあり、それを食べることで今日も一日生きることができます。
ベッドの上で丸まっているネコをなでると、ゴロゴロとのどを鳴らしてくれます。
遊びに行くときにイヌに声をかけると、飛びついてきてくれます。
家の中には幸せがいっぱいありました。