「見果てぬ夢」を抱いて
    演出/さとう としかつ

     同時多発テロ・報復戦争・アフガニスタン難民・炭そ菌・・・平和な未来を願った新世紀があっという間に戦争に突入してしまいました。しかも、自衛隊の海外派兵を容認する参戦法案が国会で審議されています。時代の急激な変化に驚いてしまいます。21世紀への希望は「見果てぬ夢」だったのでしょうか。一刻も早く人類の英知を集結し、大切な命を奪わない平和が訪れる事を願ってやみません。
     さて、私たちが今回取り上げた作品は・・・「見果てぬ夢を」抱いて再出発していく物語です。若手の作家、堤泰之氏(プラチナ・ペパーズ)の脚本。読みながら思わず笑ってしまいました。素敵な言葉も散りばめられており、ラストシーンがとっても爽やかです。
     現代、東京近郊にある総合病院の裏庭が舞台。病院の中でそれぞれの時間を生き過ごしている人々…それぞれの人生の中で起きるそれぞれの出来事が絡み合いながら、人間模様を軸にしてドラマは展開していきます。
     食道ガンの宣告を受けて思い悩む、西岡(演ずるは 河村拓哉)。妊娠3ヶ月、前途がみえない西岡の妻、京子(飯田良子と頑張り屋の新人 富島章子のダブルキャスト)。ガン告知に戸惑う新米の外科医、進藤(好青年の新人 田島健一)。その進藤に告知レッスンをする演技派婦長、武(田中まさえ)。糖尿病で入院しているセクハラ大魔王、郷田(近藤春夫)。その息子、ラブホテルチェーンの専務取締役、啓一郎(田中 勉)。茶目っ気なホワイトエンジェル、千夏ちゃん(朝比奈生美とプロを目指す新人 左善七未)。身ごもった不思議な老婆、宗政(佐野和子)。糖尿病で長期入院、一皮むけばエキセントリックな芸術家、杉(ユニークな新人 萬田哲之と後援会からの助っ人 田中洋治)。腹膜炎を併発してしまった熱血演劇青年、飯尾(中村政彦)。けな気な飯尾のガールフレンド、羽生田(篠崎梓)。夫婦・親子・恋人・・・これらの人々が病と向きあいながら「見果てぬ夢」を抱く、こころ温まる物語です。迷路に迷い込んだ患者たちが、奇跡や夢や希望を抱き、現実に向き合う中で出口を見出していきます。
     幸いにも4人の仲間を迎えることが出来ました。ベテランと新人が、それぞれの持ち味を生かして演じます。今回は、3組のダブルキャストがあり2通りの(土・日で入れ替え)お芝居が楽しめます。1幕物、上演時間は約1時間30分、短い作品なのですが中身はちゃんとつまっています。読んで面白かったのを、やって面白くするのは難しいものです。キャラクターを自分自身で工夫し、みんなの個性とアイデアがいきる芝居作りを目指してけいこに励んでいます。新しい作品への試み・・・どんな舞台が描けるのか?
     皆さん、ご期待下さい!