子どもたちの声が聞こえますか
演出:さとう としかつ

今年は戦後60年。
折りしも、フィリピン南部ミンダナオ島で元日本兵を名乗る2人が生存していた報道が飛び込んできました。
戦争の傷跡がこんなかたちで残っているとは、驚くべき出来事です。
第二次世界大戦後も、世界に戦争や紛争は絶えず、21世紀が始まるや、イラク戦争が起き、アメリカは容赦なくハイテク大量破壊兵器を使い、多くの人々が命を奪われました。

日本では、二度と戦争をしない、二度とゆがんだ教育をしない、そのために制定された「憲法9条」と「教育基本法」が改悪されよとしています。
戦争は、どんな素晴らしい理屈をつけても、犯罪であることに変わりありません。
いつになったら、世界に平和がおとずれるのでしょう。
なぜ人間は戦争をやめないのでしょう?

その問いかけに挑んだのが「動物会議」です。
戦争や争いごとの犠牲になるのは、いつも罪のない子どもたち。
ゾウは「子どもたちが可愛そうだ」と、キリンは「人間ってうんざりだ」と、ライオンは「たてがみが真っ黒になるよ」と、嘆きます。
獣、鳥、魚、虫、ありとあらゆる世界中の動物たちが、地球の隅々から集まって、「子どもたちの未来のための」の動物会議をひらくのです。

作家のケストナーは、ファシズムの嵐が荒れ狂うナチス政権下、危険な目にあいながらも屈せず、最後までドイツにとどまり、平和と自由を求めペンをにぎりつづけました。
戦後も、軍拡反対、核兵器廃絶、反戦を訴え平和主義を貫きました。
その生き様と思いが作品のすみずみに色濃く、しかもユーモアたっぷりと描いてあります。
以前から上演したかったのですが、いかんせん多くの動物が登場するので諦めていました。
しかし、ダニナミックでメッセージ性のあるドラマを、今の時代に伝えたいと思い上演に踏み切りました。

今回幸いにも、フォトジャーナリスト 森住卓様(日野市在住)の快諾を得、世界中で記録された戦争の犠牲になった子供たちの写真を劇中で使わせていただける事になりました。
私は「おとなはなぜ戦争するの」(新日本出版社)の本に胸を打たれ創作のエネルギーにしました。
まったくの偶然ですが、その本に掲載されていた写真は森住様の作品でした。
役者で、人形で、パネルで、映像で、あらゆる媒体を駆使して物語を創りだします。
6人の子供たちも出演し、老若男女20人の出演者が世界の平和を願い、歌とダンスを交えて楽しく感動的に描きたいと日夜取り組んでいます。
是非、ご来場下さい。

世界に 平和を 未来へ