劇団「ひの」 けいこ 日誌    キャスト スタッフ    概要    もどる
太陽の子

名場面&感想


沖縄亭に集う人々の心に残る沖縄戦の傷跡、
それを隠しつつも明るく生きている人たち。
その人間模様がすごくよく表現されていて、
どんどん舞台に引き込まれていきました。
いろいろな意味ですごく考えさせられる作品でした。

中学生の頃に聴いた河島英五の歌「てんびんばかり」。
母親が赤ん坊を殺しても、仕方の無かった時代なんて悲しいね。
母親が赤ん坊を殺したら、キチ○イと言われる今は平和な時。

何人もの人を殺した男がいる。
掛替えのない命を奪ってしまった。
次はこの男が殺される番だ。
掛替えのない命が奪われてしまう。

国と国とが争わなければ平和にならないのだろうか。
同じ様にビートルズを口ずさんでいる若者同士が血を流し合って。

真実は一つなのに、どちらが真実なのかが解らない。
しかも真実が正義とも限らない。
人の心の中にある矛盾や立場の違いによって生まれるどうしようもないもどかしさを「天秤計り」に掛ければ、重たい方に傾くはず・・。
と唄ったこの歌に、訳も解らずショックを受けた。
救いは、まだまだ中学生で世間の「せ」の字も知らず、杓子定規な正義感を悩み苦しむ事無く持ち合わせていたからだろう。

  二十歳の頃に観た今村昌平監督の映画「楢山節考」。
雪解けした春の田んぼに投捨てられた赤ん坊の凍死体。
農作物を盗んだ一家が、泣き叫ぶ妊婦や幼児も関係なく村人達に生埋めに。
七十になった村の年寄りは、息子に背負われて楢山まいりに向かい死を待つ。
貧しい村が存続するための厳しい習わし「口減らし」。
一口減れば、赤ん坊は殺されずに育てられる。
これは遠い昔に有った現実なのかと強い衝撃を受けた。
救いは、いにしえの世の姨捨山伝説を小説化したものと知った時だった。

  そして45歳になった今年の冬に観た劇団ひの「太陽の子」公演。
そういえば、東條英機は、A級戦犯として4月29日(昭和天皇の誕生日)に起訴され、12月23日(現天皇の誕生日)に絞首刑に・・。
天皇も重い十字架を背負っているんだなぁ〜。
と、最近になって得たうんちくを自身に披露しつつ稽古場劇場へ。

超満員で汗ばむ場内をしばし見つめ、消防法上大丈夫かと心配し、一つしか無いであろう非常時の逃げ場を確認していると照明が落ちた。
原作を読んだ事の無い私は、観劇前に読もうと思ったが止めた。
沖縄戦の知識が皆無に等しい自分が、原作と比較して批評家ぶるよりも、戦後50年以上経過した沖縄戦を背景に、劇団員達が魅せる「太陽の子」から何を感じるかを楽しもうとの思いからだ。
が、楽しめない。
感動、怒り、苦しみ、憎しみのどれとも付かない涙があふれる。

ふうちゃんのお父さんの心の中で未だに終わらない戦争。
病気のお父さんを気遣い、過去を振り払うように気丈に振る舞うふうちゃんのお母さん。
過去に沖縄で有った出来事を病気のお父さんの未来のために知ろうとするふうちゃん。
我が子を自らの手で殺め、戒めるべく手も手榴弾で失くしてしまったろくさん。
怒りの矛先が解らず、真実の沖縄を追い続けるギチョンチョン。
両親に捨てられ、大好きな姉を失い、自分の知らない沖縄に翻弄されるキヨシ少年。
ふうちゃんからの問い掛けが自身への問い掛けであった事に気付き、ふうちゃんの行動に自身の答えを見出す梶山先生。
沖縄であることで傷つき、沖縄であることで救われ、成長してゆく。
救いは、空の青さにも負けないふうちゃんの明るい笑顔。
救いは、澄んだ沖縄の海にも負けないふうちゃんの広い心。
救いは、過去を責めず、未来に向かうふうちゃんの愛。
憂いを支える「人」という字は、優しいふうちゃんのことか。
二人のふうちゃんが手を振った時ようやく我に返り、演劇であることに安堵する間もなく小さな十字架を背負った気がした。

「演出者と劇団員の思うつぼだったかな?」と、ようやく笑みがこぼれ、劇団を背に帰路へ。
脱帽です。

いつになってもなくならない、差別と偏見。
誰かをおとしめないと自分の存在を認められないのだろうか・・・。
本当の強さとは何なのかを何度も問われた気がした。

痛みを経験しない者は痛みを知らず、優しさを知らずということか。
それでは寂しいではないか。
悲しい思いをしないと美しい音色が出てこないのだろうか。
それではやるせないではないか。

平和な世の中をありがたく感じ、平和の中を生き続けられるように
物語を通じて送られたメッセージを心に焼きつけて生きていきたいと思う。




とても感動しました。
物語は前に読んだことがあるので知っていたのですが、
泣いてしまいました。

沖縄の情景もすばらしく、いつか、
この物語を 携えて沖縄の海を見に行きたいと思いました。



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