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劇団「ひの」 83回公演
銀河鉄道の夜
明日へのパスポート
演出/佐藤利勝
「銀河ステーション」「銀河ステーション」。白鳥座に形どられた北十字から、乳の流れ(Milky Way)とも呼ばれている天の川を南十字星へ向かって走る銀河鉄道の旅。壮大なスケール、美しい描写、命や生き方に関わるエピソード、類まれな創造力の中で物語は進み、列車の中での出会い、色々な出来事を通じて「幸いとはなにか」を深めていきます。人それぞれに「幸い・幸せ」の感じ方や受け取り方は違いますが、個人での「幸い」ではなく「本当(みんなの)の幸い」とはなんなのか、どの様にして得られるのかを探求していくドラマです。
演目として選んだのは昨年の12月でした。2月公演「新羅生門」を終え、脚色に取組んでいた・・・3月11日に未曽有の大地震、大津波、そして原発事故が発生しました。なかなか進まない復旧・復興の道のり・・・避難所や、そこすら追われ止む無き事情で知り合いも少ない待機所でのプライバシーもない生活、仮設住宅でのいとなみ・・・充分な暖房器具もなく東北の寒さに凍える人々。故郷から遠く離れ異国の地で暮らす人々・・・風評被害。4月からけいこをはじめたのですが、日々の暮らしや演劇活動が、それらの出来事から離れることなく今に至っています。そして日々苦しくなる私たちの生活や不安な先行き、それらは「本当の幸い」を主軸としたこの作品のテーマと深く繋がっているからです。
宮沢賢治は、明治三陸大津波の1896年に生まれ、昭和三陸津波の1933年に亡くなりました。その間、東北地方では冷害や不作が続き、農民の暮らしは厳しく、娘の身売りをするしかないような悲惨な状況だったのです。9月11日、三上満さんをお迎えして開催した「秋のつどい」で、お話の冒頭に三上さんは賢治を「アウトドアの人」「かいま見た人」「悲観の人」であるとお話しされました。「雨にもまけず」に示されている生き方をまっとうした賢治、理想郷イーハトボーを築こうとした賢治。三上さんは著書の中で『賢治は作品と生涯を通じて「人々のほんとうの幸い」への交響曲を書こうとした…賢治の残した断片と萌芽は、まさに「未来に属するもの」である。私たちは今、そのバトンを繋いで歩いている』と記されています。
この作品は劇団「ひの」第53回公演として1995年に上演、16年ぶりの再演となります。賢治の思いを色濃くしたドラマとしてあらたに書き直しました。劇団員9人(20~60代)と準劇団員(小中学生)7人、合計16人で40以上の役を演じます。長年に渡り劇団を支えていただいてるプロorプロ級のスタッフの方々と、ベテランと言っても恥ずかしくない劇団員のスタッフのメンバーが、けいこ場公演としてふさわしい幻想四次元の世界を創り上げようと、日夜創意工夫を凝らしています。そのスタッフとキャストと観客の皆さまと織りなすコラボレーション…その空間でなにがうまれるか、楽しみでなりません。ご来場を心からお待ちしています。
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