冬耐えて やせ山茶花の 心意気
演出:佐藤利勝
♠生の舞台を通じて
今年の6月、児童劇「車のいろは空のいろ」は、コロナ感染対策を施し、けいこ場で無事に上演を終えました。好評の中で多くの皆様に観劇して頂く事ができ、子どもたちの笑顔も印象的でした。 本当にありがとうございました。2019年12月に上演した第98回公演「夜の来訪者」以来、久しぶり、やっと大人向けの芝居を上演する事が可能となりました。 この間、「車のいろは空のいろ」以外は、録画した作品をユーチューブで公開して鑑賞していただきましたが、いよいよ生の舞台を通して、皆さまと演劇空間を共有する事ができます。 ♥ふたくちつよしさんの作品
コロナ禍中ですので、楽しい作品を上演したいとの思いから探しあてたのが「山茶花さいた」でした。親との同居をめぐって、とってもハートフルであたたかな物語りです。 ふたくちさんの作品は、2016年12月に第92回公演として上演した「春たちぬ」に続く2作目です。 市井に生きる人々をユーモアとペーソスを交えながら描かれる作品が数多くあります。「ダモイ 収容所(ラーゲリ)から来た遺書」ではシベリア抑留者、「静かな海へ MINAMATA」では水俣病患者、「百枚めの写真 一銭五厘たちの横町」では、戦争孤児を題材とし、社会的なテーマにも取り組まれています。 「山茶花さいた」が初演されたのは、1991年(平成3年)です。舞台設定も当時になっています。 バブル(1986年12月から91年2月)が終わる頃、昭和から平成に移り変わった時期です。 加賀美家にも、その時代の空気や文化が流れていますが…現代につながる事、示唆に富んだ言葉がつまっています。 ♦人間らしいこと
あまり語るとネタバレになってしまいますが・・・ゴリラや生態系のことが描かれています。それらを通じて「人間だけが生態系を壊せた」「子が親の面倒を見るという習慣は人間だけが作れた人間らしい習慣じゃないか」「楽と幸せとは、違うと思う」などが語られます。 ふたくちさんが、参考にされたのかは分かりませんが、ゴリラ研究の第一人者である山極壽一(やまぎわじゅんいち)さんは、家族を愛し・仲間を尊敬し・楽天的に生きるゴリラから、人間の生き方を探る事を問いかけられています。 私は「山茶花さいた」の作品と出会い・・・道徳や義務の観点からではなく、本来の家族のあり方や親と暮らすことなどについて、まさしく「目からウロコが落ちる」発見があり、一人の人間としてとても学ぶ事ができました。 その学びと感動を公演を通じて伝えたいと思っています。 ♣山茶花の開花を
「山茶花」は、冬の寒い時期に開花します。「ひたむき、困難にうち勝つ」などの花言葉があります。 この文章のタイトルとし た「冬耐えて やせ山茶花の心意気」は、劇中の台詞ですが、この作品では随所に俳句が詠われますので、それも楽しみにして下さい。 9人の出演者とスタッフ一同が日夜挑んでいます。 感染対策をして客席も減らしてあります。 皆さまのご来場を心からお待ちしています。 |