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劇団「ひの」 89回公演

ブンナよ木からおりてこい
演出より

いのち輝く舞台を目指して!
演出/佐藤利勝

 「ブンナよ、木からおりてこい」は、2004年に第71回公演として初演しました。当時、長崎で12才の少年が幼児をビルから突き落とした「駿ちゃん事件」、佐世保で6年生の少女が同級生を校内で殺害、など衝撃的な事件が多発。2003年3月、「イラクの自由作戦」として米英軍が空襲を開始、悲惨な戦況が連日報道されていました。翌年、自衛隊がイラクに派遣されます。そんな中、「いのちの尊を訴えたい」との思いで「ブンナ」に取り組みました。その後もネット犯罪、いじめ、家庭内殺人、虐待など増加。2008年に再演する事にしました。その頃、イラク民間人の死者は数十万人、駐留米軍の戦死者は4000人に達していました。
 今年は戦後70年。それと繋がった作品を探していたのですが、児童劇として子どもたちと共有できる作品が見つからず、戦争が題材ではありませんが、「いのち」をテーマにしており、平和を願う思いと重なるので、三たび「ブンナ」に取り組む事にしました。上演を決めた後となりますが、1月イスラム国による後藤さん、湯川さん人質殺害。2月上村遼太さん殺害、4月野口愛永さん生き埋め・・・痛々しい事件が後をたちません。あたかも自衛隊員の命が粗末にされる戦争法案が「平和」の名のもとに国会で審議されています。
 トノサマという名前をもっているが故、他の仲間と違うと自尊心が高かったブンナが、木の上で生と死の壮絶な出来事を体験し、大地に戻ってきます。その世界は擬人化されており、人間社会を描いています。原作のあとがき「母たちへの一文」には、「私はこの作品を書くことで、母親と子どもとともに、この世の平和や戦争の事を考えてみたかった。それから子どもがよりぬきんでたい、誰よりも偉い人間になりたい、と夢を見、学問にも、体育にも実力を発揮し、思うように他の子をしのいでゆく裏側で、とりこぼしてゆく大切な事についても、一緒に考えてみようと思った。」と、記されています。この投げかけは、今日よりいっそう響きます。「木からおりてこい」という、題材に込められた思想を大切にして創造に挑んでいます。
 今回、7人の子どもたちが新たに参加し、9人の準劇団員(小学3年から中学3年まで)と、10人の劇団員(10代から60代)が切磋琢磨して公演の準備に励んでいます。体験・発見・感動をキーワードに「いのちの輝き」「いのちの尊さ」「生きる喜び」を届ける、エネルギッシュな舞台を目指しています。是非、子どもたちにも声をおかけください。

みな様のご来場を心からお待ちしています。