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劇団「ひの」 90回公演

羽衣はある 私たちは飛べる

演出/佐藤利勝
 この作品は、昨年の9月に「青年劇場」によって上演されました。残念ながら公演を見る事はできませんでしたが、脚本を読んで「これだ!」と、思いました。初演から間もないのですが、特別に上演許可をいただけることができました。「青年劇場」は、現代に切り込んだテーマに、つねに取り組んでおられます。この作品は、作家の篠原さんに「福島から離れた場所から福島のことを語る作品を」との青年劇場の依頼の中から、うみ出されました。その篠原さんは、震災以降、何度も被災地に足を運ばれ、劇作家としての活動も含め、被災者に寄り添った支援を続けられています。

 羽衣Houseは、宮城県登米(とめ)市に実在する、「手のひらに太陽の家」がモデルとなっています。被災した子ども達の支援と被災地の活性化のために造られた復興支援施設です。そこに集う10人のメンバー、それぞれの立場や考え方の違い、様々な事情と思いが絡み合う中で、現代に響く色々なテーマが語られていきます。焼肉パーティーだった会場を荒らした、真犯人のどんでん返しは見事で、原発被害が家族や子どもたちをいかに苦しめているか、胸を打たれます。原発事故が題材だと重い・暗いイメージを持たれるかもしれませんが、物語は推理ドラマの様に面白く巧みに展開していきます。この作品では、むしろ、明日への希望や可能性が表現されています。

安保法制(戦争法案)、原発再稼働、辺野古新基地建設、TPP大筋合意などなどなど、数えあげたら切りがない民意を無視し踏みにじる「強権極まり」(翁長沖縄知事の言)。今、民主主義・立憲主義をないがしろにする政治に、学生が学者がお母さんが、多くの人々が声をあげています。憲法という名の羽衣を箪笥から出し始めたのです。『時代に向き合うおとなたちは。羽衣はある。わたしたちは飛べる』の言葉(ト書き)で、この作品は終わります。みんなが、本来もっている羽衣をひろげ、動きだす事を願っています。

 3回の勉強会を開催しました。菊地さんから余儀なく漂流させているフクシマの人々の叫び、大山さんから被災者の思い、隅田さんから憲法からみた原発の告発を、勉強しました。そこで学んだ事、日々の暮らしの中で自分たちが感じている事を創造の糧とし、人間ドラマを目指し、日夜、劇団員が奮闘しています。幸い、新人の男性を迎える事もできました。舞台は2013年8月、久々に挑む現代劇です。皆様のご来場を心からお待ちしています。