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今月のクローズアップ

[2003年1月]


劇団「ひの」演出:佐藤利勝さん

写真は去年の劇団忘年会で、罰ゲームとしてオカマメイクをした時のスナップ


演劇のとりこになった大きな子供

 劇団「ひの」は、「日野にルネサンスを」を合言葉に1973年5月に創立しました。今年で創立30周年を迎えます。私はその年に、電気会社に就職するため熊本県から上京してきました。そして、1976年の夏、劇団が11回公演「夕鶴」に取り組んでる時に訪れ、それ以来27年間参加しています。月日が経つのは早いものです。この間、いろいろな人々に支えられて歩んでこれました。

 私の入団の動機や思い出を書いていたら・・・膨大になってしまいました。残念ですが、途中で筆を折ることにします。演出を担当して19年、演出した作品40本、10作の児童劇を脚色しました。それらの事も含めて別の機会に文章にまとめてみたいと思っています。

 そこで今回は「演劇の魅力」について少し書いてみたいと思います。先ず、その一番は、出会いの魅力です。演目が決まったら、その作家との出会いがあります。その人の作品や人物像について。また、その作品世界に描かれたさまざまな出来事・役柄との出会いです。それらを掘り下げるためには、多くを学ばなくてはなりません。資料や本、映像などから、時には体験することも必要になります。みんなで都内の高級ホテルに泊まったり、京都まで夜行バスに乗ったりいろんな体験をしました。表現するには、裏づけが要求されるからです。それらは、自分自身を高める事にもなります。

 二つ目は、人との出会いです。演劇は総合芸術です。役者、スタッフ、そして観客との中で創り出していきます。そんな中で、多くの人々と出会うことになります。ドラマチックな場面も多々ありました。人の出会いは貴重な財産になります。

 二番目の魅力は、創造する喜びです。活字でしかない脚本から、みんなで力を合せて、試行錯誤しながら真剣に創り上げていく行為。苦しみが大きかった分、その喜びは大きいものになります。これはまさに人間としての喜びです。

 三番目は、表現する喜びです。自分たちが思った事、思っている事を、観客の目の前にメッセージできる。そして、その空間を共有することが出来る。まさに演劇ならではの醍醐味です。

 劇団に関わる皆の思いや要求はさまざまです。それらを実現できる場となれるように劇団「ひの」を運営していきたいと思っています。また、多くの人が劇団「ひの」は家族のようだと口ずさんでくれますが、そのような暖かい温もりのある場としても大切にしていきたいと思います。そのためにも、劇団けいこ場の存在に大きな意義があります。5年後の夢、新けいこ場建替えを是非実現させたいと思います。

 演劇をやることが当たり前になっている今、新しい刺激がなく、なおざりに取り組み、正直ちょっと気だるくなっていました。そこで、このクローズアップへの原稿依頼を受けた時、「何故、演劇を続けているのか」「どう続けようとするのか」をまとめようと思いました。が、演劇の魅力を書いているうちに、おのずと答えが出たようなものです。やはり、それら演劇の魅力が私を虜にしているようです。劇団「ひの」を取り囲む人々の輪も少しずつ変化しつつあります。今を大切にし、未来を見つめながら、劇団をもっともっと魅力的にし、楽しい芝居をますます情熱的に創造していきたいと思っています。

 次回は、シェークスピア作「夏の夜の夢」です。実はこの作品に関わるのが怖くて怖くて、最後まで一人躊躇していました。これまでと違った創造力が要求される作品だからです。しかし、内容的には面白いものが創れそうです。思いきって冒険です! 全力投球して取り組み、印象的で素敵なお芝居にしたいと思っています。乞うご期待下さい!