今月のクローズアップ
|
[2005年2月]
|
|
木村晃純さん
ドリアングレイの肖像と言う本がある。
もちろん、内容は面白いのだが、それにも増して、興味深いのは、実は序文である。
実はこの本の作者はオスカーワイルド、サロメの作者であるが、序文のなかで、その文筆力を思う存分駆使して、あることを結論付けてる。
つまり、芸術はまったく無意味だ。
そう、私も思うのだ、芸術は無意味だ。にもかかわらず、私は劇を見に行き、映画を見に行き、本もやたらと読む。
こうして、劇団に入ってみると実に、楽しい。
その結果、別段、日本経済に貢献しているわけでもなく、会社に貢献しているわけでもない。
昔なら、そんな時間があったら畑を耕せといわれるに違いない。
劇を一度も見たことない人間は身近にいくらでもいる。けれど思うのだ、自分は楽しい。
おそらく劇を見ている人も楽しいに違いない。
つまり、劇は酒やタバコである。
私の好きな作家で開高健がいるが、どの作品だかもう忘れたのだが、いいことを言っていた。
いわく、「三つの冷たい真実に勝る、一つの優しい嘘を」。
とかくみんな人生それなりに大変だ。
酒やタバコに走るのはもっともなことだ、けれども、どうせなら、劇に走ってもいいのではないか、少なくとも体に害はない。