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今月のクローズアップ
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[2006年04月]
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渡辺たかよさん

劇団「ひの」との出会いは15歳の時。
友達が先に入団していたのがきっかけで、私も誘われ早速劇団に電話…。
…と、ここまでは良かったのですが、電話の前で受話器を上げ下ろしする事十数回。
小さい頃から引っ込み思案で気の小さい私は、この時も電話をするかしないかで散々迷ったのを覚えています。
困り果てて私は、一度友達に電話。
すると友達は「入団したいんですけど!って言って切れば大丈夫だよ!」とアドバイスをくれました。
よし、それなら!と意を決して劇団に電話。
受話器の向こうで「はい」と、たった一言男の人の声。
「入団したいんですけど!」
友人に教えられたとおりそう言って、よし言えた!とそのまま受話器を置こうとした私に、声の主は「あ〜!ちょっと待って待って!名前聞かないと入団できないよ」と慌て気味。
…かくしてそれが、劇団の演出・佐藤利勝であったのは言うまでもなく。
今考えれば、なんと無礼だったことかと反省然り、未だに佐藤さんにも「あの時は何だコイツはと本気で思った」と言われる始末で、申し訳ないと思いつつも、だからこそこうして今の私が居るのだなぁと懐かしくも思います。

お芝居をすること…それはとても楽しく、そして時に全てを投げ出したくなる程ツライ事。
それでも、自分の歩いてきた軌跡は必ず残っていきます。
私の中での役者のイメージは「真っ白な地図を持った冒険者」。
真っ白な地図…少なくとも私はいつも、それを握り締めて旅に出る――。
歩き出してからの道のりは、真っ直ぐに伸びた輝きに溢れている時もあれば、まったくの暗闇の道であったりもする。
光の溢れる道を歩けた時は、歩ききる瞬間まで楽しく、心弾む旅路に。
暗闇の道を歩かなければならないときは、光の出口を探す、辛くしんどい旅に。
…そして旅が終わった時、真っ白だった私の地図にはひとつの「地図」が描かれている。
その一つ一つが、私が立ち寄った証として光を放ち、その時々の世界にたったひとつの、「私だけの地図」が出来上がる。
それは、いつも私のとっての宝物。
劇団「ひの」は私にとって、いつも素敵な宝物をくれる魔法の国。
この地図が出来る瞬間を見るために、きっと私は芝居をしているのだろうなぁ…と思います。